2023年 3月末時点PF
2023年3月末時点のポートフォリオです。
前回、年初時点PFと比較して、個別では5851 リョービ、6141 DMG森精機(比率2%未満まで)、6997 日本ケミコン、9104 商船三井の日本株4銘柄を売却・利確。一方で、2692 伊藤忠食品、4528 小野薬品工業、7004 日立造船の3銘柄を新規買付し、株式以外では債券ETFである2621 iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジ有り)も追加するなど、これまで意識してこなかったセクターを面白半分、期待半分でPFに組み入れています。また、2146 UTグループ、6502 東芝の2銘柄に関しては買い増し(追加買付)もしています。
相場としては、昨年末~年始にかけての全体の落ち込みも振り返ってみれば絶好の買い場だった、と言わんばかりの好調さを演出。1月中旬~3月上旬まで、2ヶ月近くに渡る予想以上に息の長い強気相場となり、「割安日本株が見直されている!」と息巻く論調もしきりに見られました。それが、突如降って湧いたSVB(シリコンバレーバンク)の経営破綻からの金融不安・・・最終的にはクレディ・スイス・グループの信用不安からのUBSによる電撃合併という、誰もが予想もしなかった歴史的一大事によって水を差される形に。特に銀行株を中心とした金融関連株にとっては、日銀の早期利上げ観測が後退したことも相まって、昨年来の上昇分をほぼ帳消しにする程のマイナスインパクト。私も地銀株は複数保有していながら、鉄鋼、商社など、日本株の中でもとりわけ強く、金融不安の中でも底堅かった銘柄を一つも保有できなかったのは惜しむところです。
今後の戦略についても実はほとんど白紙状態です…。少し気は早かったものの、2月末に相場の過熱感からキャッシュポジションは結構増やしており、それが金融不安でも狼狽売りせずに済んだ安心材料だったかなとは思っています。一先ずの優先事項としては、現状比率の低い英字・カタカナ社名の銘柄(笑)を積極的に買いたい、買い増していきたいところですが、正直まだ買いたくなる水準からは程遠いと思っています。G.W.頃まではまったり緩く相場に向き合う感じで、5月以降に発表される23年3月期本決算と24年3月期予想はじっくり精査していきたいところです。
次回更新は6月末を予定。
*1:米国株4銘柄は比率がそれぞれ2%未満のため表中では合算
名証単独上場銘柄
日本国内の株式の公設取引所と言えば、現在全国に4つある事は投資家の皆さんならご存知の事でしょう(そして、かつてはもっと沢山あった事も…)。かつてのツートップだった東証と大証は、2013年に合併により東証へ統合され、8697 日本取引所グループ傘下で運営されていますが、札証、名証、福証の地方3取引所に関しては、今も(システム面こそ繋がりはありますが)それぞれ別個に運営しています。
現状としては、日本株=東証と言うくらいに一極集中化が進んでおり、地方3取引所はいずれも「魅力的な上場企業が少ない」「市場参加者も少ない」「知名度が低い」等の悪循環に陥っており、残念ながら市場機能の存在自体が疑問視されています。以下は、2021年(東証のみ2021年度)の各取引所の年間売買高並びに売買代金の比較です。
- 東証 売買高:4136億4081万株 売買代金:833兆3051億2800万円
- 名証 売買高: 1億1641万株 売買代金: 745億7654万円
- 札証 売買高: 1億4837万株 売買代金: 343億8700万円
- 福証 売買高: 1421万株 売買代金: 133億8200万円
これを見ても明らかなように、地方3取引所を合計しても東証の数千分の一程度の規模感しかありません。言ってしまえば、存在自体がもはや空気みたいなものです。意識しないとそれがある事すらも気にならないレベルってわけです。このうち、一応二番手に付け、一応日本で二番目に規模の大きい証券取引所が、愛知県名古屋市にある名古屋証券取引所(名証)です。今回はそんな名証上場銘柄のお話です。
名証のみに上場する銘柄
複数の市場に上場(つまり掛け持ち)している所謂「重複上場銘柄」を除き、名証のみに上場している銘柄を「名証単独上場銘柄」と呼んで*1います。2023年2月19日時点で、名証上場企業数は275ありますが、そのうち単独上場は58銘柄です。ざっと2割くらいですかね。名証は東証と同じく3部制でして、「プレミア」「メイン」「ネクスト」と分かれますが、単独上場銘柄の分布としては、プレミア3、メイン41、ネクスト14銘柄と、メインが圧倒的に多いです。東証に対しては、プレミア=プライム、メイン=スタンダード、ネクスト=グロースという感じになりますが、これは2022年4月の東証再編に合わせたものに過ぎず、実は東証とは若干意味合いが異なります*2。なお、プレミアとメイン市場に関しては、基本的には中京圏(愛知、岐阜、三重の3県)に本社を置く若しくは事業のウエイトを置く企業がほとんどです。その点、ネクストだけは上場基準が緩いので、他地方に本社を置く企業が大半を占めます。まあ言い方は悪いですが、利用している&されてしまっている側面があるように思います。
なお、名証銘柄であっても取引に特別な制限はなく、主要なネット証券でも東証と同じように取引ができます(楽天証券に限ってはスマホ・タブレット向けアプリでは非対応)。唯一注意すべき点としては、ザラ場が他市場より30分長く、大引けが15:30である事でしょう。
名証単独上場銘柄としての「伊勢湾海運」
さて、2023年年初PFにも記載していますが、私も名証単独上場銘柄を1銘柄だけ保有しています。それが、メイン市場上場の9359 伊勢湾海運です。
社名の通り、広くは伊勢湾、その中でも日本一の貿易港である名古屋港を拠点としている企業です。勿論、本社も名古屋市港区にあります。「海運」を称しているので一般的には船会社と思われがちですが、同社はむしろ大型船舶は1隻も保有しておらず、港湾運送業、倉庫業、通関業を中心に手掛けています。要するに、船で運ぶのではなく船に載せる(船から降ろす)業務全般です。実際、証券コード上の33業種分類でも、同社は海運業ではなく倉庫・運輸関連業に分類されています。
私が伊勢湾海運に投資している理由ですが、まあ一番は希少性があるからですね(笑) 勿論、さすがにそれだけで投資対象とするには決め手に欠けますが、名証が公式に定義付けているように、「安定した経営基盤が確立され…継続的な保有対象となりうる」という点に当てはまったのも結構大きいです。自己資本比率は70%超で、また皮肉にも流動性が低いがゆえに安定株主が多く、短期的な株価の乱高下にも巻き込まれにくい。さらに、23年3月期で連続2期増益(予想)と、目先の業績面も問題なし。むしろ業績に関しては、前期からの海運(コンテナ船)の大相場の恩恵を受けており、その割には株価は安値で放置され、配当利回りも買い値基準で4%超と…客観的に見たら「買いでしょ!」と思う人も多いと思います。私もたまたまそのタイミングで希少性の観点から名証単独上場銘柄に興味を持ったというお話です(笑)
名証の今後
名証上場銘柄は年々…どころか日に日に減り続けており、まさに3日前(2/16)にも、プレミア市場上場の2540 養命酒製造が上場廃止(東証との重複上場解消)を決定した事に伴い、1ヶ月間の整理銘柄指定を受けています。少し遡っても、22年9月にはメインの1438 岐阜造園が、12月にはプレミア単独上場四皇の一角だった5461 中部鋼鈑が、それぞれ東証スタンダード、プライムに(重複)上場を果たすなど、大企業の重複解消だけではなく、名証からのステップアップ流出も相次いでいます。おそらく今後も、コスト削減のための名証重複上場廃止が続く一方で、新規上場(IPO)が目に見えて増加する事もなく、残念ながら市場としての活性化は見込めそうにもありません。10年以上も前から有識者の間で議論される地方市場の存在意義ですが、この先10年間がどうなるかと言ったら、まったくもって不透明と言えるでしょう。
*1:俗称ですがまあ割と使っている投資家は多いと思います。
*2:名証公式サイトにある通り、主に上場審査基準に大きな違いがあります。
デンマーク史上最大の企業合併
2022年12月12日、北欧の証券市場では大きなニュースとなる企業合併が発表されました。
それが、デンマークのNovozymes A/S*1とChr. Hansen Holding A/Sの合併です。
実は、デンマーク史上最大の2企業間合併という事で、北欧をはじめヨーロッパでは当時そこそこ大きく取り上げられましたが、日本では上記のロイター日本語版がサマリーで少し触れているくらいで、まったくと言っていい程話題にはなっていません。その代わりにと言ってはなんですが、当ブログで少し紹介させていただきます。
Novozymes と Chr. Hansen
Novozymesはノボザイムズ、Chr. Hansenはクリスチャン・ハンセンと読みます。まあそのまんまですね。
Novoと聞けば米国株投資をやっている人にはピンと来る人もいるかもしれませんが、米国市場にも上場しているデンマークの大手製薬会社Novo Nordiskと似ていますよね。当然です。なぜなら、2000年にNovo Nordiskの発酵製品事業がスピンアウトしたのがNovozymesですから。
Chr. Hansenの事業内容もNovozymesに近く、中でも特に細菌培養に強みを持っています。世界で最も有名なビフィズス菌「BB-12」は同社が開発し商標を持っています。
これだけでも両社には共通項がありそうですが…実際のところ共通項だらけだったりします。そもそも両社とも筆頭株主は中間持株会社であるNovo Holdings A/S(持株会社はNovo Nordisk Foundation, ノボノルディスク財団)ですので同じノボ系(?)ですし、日本法人(ノボザイムズ ジャパンとクリスチャン・ハンセン・ジャパン)を設立し日系企業と提携している点も同じです。
デンマークの株式市場
ここでちょっと話は逸れますが、両社が上場しているデンマークの株式市場の話をば。
北欧5ヵ国のうちノルウェーを除いた4ヵ国の主要市場はNasdaq Nordicブランドの下で運営されています。そう、あのアメリカのNasdaq, Inc.です。元々は各国バラバラに運営していたのをNasdaqが買収=集約したようなものです。
デンマークの場合は、首都であるコペンハーゲンにNasdaq Copenhagen市場を置いています。通貨は、デンマークがEUに加盟しているもののユーロを採用していないので、自国通貨であるクローネ(デンマーク・クローネ, DKK)建てです。ただしユーロペッグ制なので、日本円を含めて他国通貨に対してはユーロの動きにほぼ連動します。
日本で言う日経平均株価のような株価指数は「OMXC20」です。まあ代表的な20銘柄ですね。OMXは旧運営企業の名称ですが、そのまま引き続き使用されています。OMXC20の構成銘柄で有名な企業と言えば、一番は海運会社のA.P. Møller - Mærsk(通称:マースク)でしょう。日本でも街中を走るマースクの海上コンテナを見かけた事がある人も多いかと思いますが、2020年まで輸送能力世界一だったコンテナ船部門も含め、世界最大規模の海運会社です。他に、先述のNovo Nordisc、同じく製薬のGenmab(ジェンマブ)、日本ではサントリーが輸入・販売するビールブランドのCarlsberg(カールスバーグ)等がありますね。勿論、NovozymesとChr. Hansenの2社も採用銘柄です。
ちなみに、非上場企業でも有名な企業があって、例えば、日本でも多数の店舗を展開する雑貨店のFlying Tiger Copenhagen(フライング タイガー コペンハーゲン)の運営企業であるZebra A/Sや、ブロック玩具のLEGOを展開するのもデンマークの企業ですね。
デンマーク自体には厳格な外資規制はないので、日本の個人投資家でもデンマーク株に投資する事は可能です。ただ、主要なネット証券ではまず取扱いがないので、大手証券(店頭・電話取引)や外資系証券等の利用に限られます。また、欧州株全般的にそうですが、米国株ほどの需要がないので取引手数料は高めです。1注文ごとに最低でも約定金額の1%以上はかかります。売買の往復で2%以上かかるという事ですから、残念ながら時間軸短めでも気軽に~という感じではないのが現状でしょうか。
なお、NovozymesとChr. HansenはADR(米国預託証券)も上場しています。まあ、株式と同じで、売買可能かどうかは証券会社次第ですが。
合併の概要
話を元に戻しまして、両社の合併について*2、簡単にまとめると以下のような形です。
- Novozymesを存続会社、Chr. Hansenを消滅会社とする株式交換による吸収合併
- Chr. Hansen1株に対しNovozymes B種株式の新株を1.5326株の割合で交付
- Chr. Hansenは上場廃止後、解散
- 合併完了は2023年の第4四半期中を予定
基本的には日本でも行われている企業合併と同様のスキームで、両社の臨時株主総会での決議を前提としています。異なるのは、Chr. Hansen株との交換になるNovozymesのB種株式(B-shares, ティッカーNZYM-B)でしょうか。日本でも「種類株式」として会社法で規定されていますが、実際に上場させているのは2593 伊藤園の1社(25935 伊藤園第1種優先株式)しかありません。しかも、伊藤園のそれは議決権がないかわりに普通株式よりも配当金額の高い優先株ですが、NovozymesのB株は優先株ではありません。じゃあ何なのかと言うと、むしろ劣後株です。筆頭株主であるノボホールディングス(間接的にはノボ財団)が保有しているA種株式こそが優先株で、A株は1株につき20個の議決権があります。それに対し、B株の議決権は1株につき2個です。発行済株式総数で見ても、ノボHDは全体の25.6%しか保有していませんが、議決権ベースだと72.7%保有している事になります*3。つまり、親会社による支配・意思決定を確実にしつつ、経営介入や敵対的買収から守るために2種類の株式を発行していて、一般の投資家が市場で売買できるB株は、極端な話、会社の意思決定には何ら影響を及ぼさない、実質的にインカムゲイン・キャピタルゲインのためだけにある代物です。
次に1:1.5326の合併比率ですが、発表前の終値比でChr. Hansenの株主に対し49%のプレミアムが支払われる計算になります。ただし、発表直後にNovozymesが希薄化懸念と思われる売りで急落したので、結局Chr. Hansenも連れ安(連動)しています。当然ですが、これは株式交換が効力を発生するまで上昇しようが下落しようが続く現象です。
なお、2023年1月31日時点での時価総額は、Novozymesが約807億DKK(日本円に換算すると約1兆5300億円)、Chr. Hansenが約664億DKK(同1兆2600億円)です。日本企業で言うと、Novozymesが6645 オムロン、Chr. Hansenが7202 いすゞ自動車に近いです(両社とも日経平均採用銘柄ですね)。それが、ましてやデンマーク、OMXC20のたった20銘柄のうちの2銘柄ですからね。インパクトも大きいはずです。
おわりに
2023年年初PFにある通りですが、私もChr. Hansen株を保有しています。一応Novozymesとの合併が発表される前から持っているものでして、発表後に株価が急騰して「何が起きたんだ!?」と驚きました(情報も人口も多い米国株はともかく、大抵の外国株は情報収集の難しさとタイムラグがまさに投資する上でのネックでもあります)。
元々、数年以上の長期目線で買っているので、プレミアムが乗ったからと言って売る事はありません。それ以前に、口座のある証券会社ではそもそもNovozymesのB株の取り扱いがないので、むしろちゃんと株式交換されるのかと心配になっていたり。まあ最近になってようやくコーポレートアクションの予定に載ったので大丈夫かとは思いますが…。